キツネもタヌキも入り放題

片道5時間の旅をしてスイスのバーゼル近くのデルモンテという町に友人Aとライブを聴きに逝ったのだが、大雨のなかナビゲーション能力の欠如をいつものようになじられつつ暗黒の山道を抜けて辿り着いたライブハウスは、いまぢゃ高円寺にもないようなしょっぱい箱でバンドの総勢6名が舞台の上にのりきらず、電気のつかないトイレは真っ赤なロウソク持参で、周囲を見渡せばそんなところに集う輩たちなのに意外やみんな身なりはきちんとしていたりしてしかも飛び交うのは仏語で(仏語圏スイスなのだ)、それはそれはかなりの異空間だったのだが、視点を逆向きにしてみればおそらく、冬のスイスに異常な薄着で伊語を飛ばしながらビールをかぽんかぽんとあける伊人と東洋人という私たちのほうこそ、この夜最大の謎であったに違いない。


さておき。しかし私にとってこの夜最大の謎は国境にあった。スイスはご存知の通り欧州連合にもシェンゲンにも加盟していない。よって、伊国とスイス間の国境越えには双方の国の入国-出国コントロールがある。ことにスイスのコントロールは厳しいことで有名で、前日にたまたま伊国の中央警察署で聞いたところによれば、伊国の滞在許可証の更新にえらい時間がかかるようになったここ数年、この国境では実際に「入れる-入れない」の問題が何件か起きているという。かくいう私も現在は有効期限内の滞在許可証がない身(不法なわけではないですよ)、パスポートと更新申請中を証明するチケットを片手に、少しだけ緊張して国境に臨んだわけである。が。


スルーである。スイス入国時は、スイス側の詰め所前で一応すべての車が一旦停止させられたのだが、身分証など見せることなくスルー。逆にイタリア帰国時は、停まる必要すらなかった。朝陽を受けてキラキラなアルプスの山々に囲まれた伊国側の詰め所を覗くと、ただひとりの警察官が、ちらりと顔をあげることもなく「携帯でしゃべってる」のが見えたw。いけない人もいけない物もタヌキもキツネも入り放題。


さておき。ライブはとてもよかつた。オフェルマルス。仏人である。しかしこの単語で検索しても、おそらくサッカー選手のサイトばかりが出てくるはずなので。
http://www.myspace.com/overmars