和食の繊細さ

伊人宅の食事に呼ばれ、その家人が料理する様を横で見ていていつも思うことがある。こちらでは「余った野菜をラップにくるんで冷蔵庫へ」というシーンを見ない。見たことがない。たとえばサラダひとつ作るにも、野菜たちの配分の素敵なバランスというのがあるはずだ。味しかり見た目しかり。しかしこちらのサラダは、野菜たち-そしてその個体ごとの大きさによって必然的にバランスが決まる。「トマトを1個半」という感覚は、おそらくないのである。


和食の特徴として「味のみならず見た目も重視」というようなことがよく言われるが、包丁使いの美しさや器の豊かさに言及するまでもない。家庭で日頃出て来る料理に「トマトを2個ぢゃなく1個半でやめとく」という心遣いがおそらく無意識になされていること。それだけでもう十分に和食の繊細さを物語っていると、畑のごときサラダを食べながら思う私である。