Roberto Savianoの帰還

ロベルト・サヴィアーノは、昨年、ナポリのマフィア・カモッラの内幕を暴いた著書「Gomorra」を発表した。当然ながら書かれたほうが黙っているはずはなく、発売後まもなく彼は「ベストセラー作家」と「脅しのターゲット」というふたつの身分を得るに至る。政府は特例として彼に護衛をつけ、彼自身は身の安全のためにナポリ周辺から姿を消していたが、その彼が、当人の地元であるナポリ郊外のCasertaで行われた集会に姿を見せたと今日のレプッブリカ紙が伝えている。びっくりだ。が記事の執筆は本人。本当なのだ。


たかだか小さな田舎町の広場での集会に、狙撃手まで配置されるという異常。彼自身も記事中で書いているが、まるで映画のようだけれども、しかしこの町ではそれが現実なのだという。護衛の青年たちが彼の周囲を固め、その傍らで同じ年代の少年グループが「カモッラなんて存在しない!」と声を荒げる。まあ存在しているからこそ、これだけ大騒ぎになるんだろうが。


しかし「カモッラなんて存在しない」というのは、ある面から見れば的を射ているのかもしれない。麻薬や武器をさばく人たちも、企業から上納金を巻き上げる人たちも、脅しをかけて公共事業を入札する人たちも、みんな表向きは「事業家」という肩書きをもっている。その肩書きを持つことにより、法的に脅かされる可能性が大きく減る、それが伊国の現システムであるとサヴィアーノは言う。まぁ、ニポンも規模は違えど変わらないかもしれませんが。


ナポリ近郊一帯に大きく根を張るこのカモッラの木をつついて、今まで多くの人たちが「殺されて」きた。3ページに及ぶこの新聞記事を、サヴィアーノは「Non datevi pace=あきらめるなよ」という言葉で締めている。生と死を等価なものとするこの地の若者たちへの彼からのメッセージだ。しかしきっと、これは同時に「イタリア全体」に向けての激励でもあるのだろう。