全面降伏〜ライブ

グロッソのゴールが決まったとたん、オーバーではなく町中から「うおおおおおおお」という叫びが聞こえてきた。あの一瞬、一斉に発せられた伊国中の絶叫は一本の大きな大きなうねりとなって少なくともアドリア海の向こうクロアチアぐらいまでは届いたはずだ。もちろんわたしの口からも「ぎやああああ」という腹の底からの絶叫が飛び出した。同時に涙がぶわあと。先日「愛した覚えはない」などとほざいたわたしが全面降伏、負けを認める。ごめんなさい。


今も家の前の広場では車が自転車がバイクが人間が雄叫びをあげながら走りまわっている。テレビの音も聞こえない。決勝だ。ドイツを破って決勝だ。開催国を破っての決勝だ。誰もが思ってもみなかった決勝だ。しかしそれ以前に、本当に今日の試合はツラかった。伊国敗退を「ひっそりと」見届けたかったわたしは、一緒に観戦しようという誘いをすべて断り、自宅でひとりクラくテレビの前に座っていた。後半、疲れで選手らの足が止まり、もーだめかと思ったときには、気を紛らわせるためにテレビの見えない台所へ行って、おもむろにサヤインゲンの筋とりを始めた。へなちょこな奴である。延長も後半に入り、このままPK戦かと思うと目の前が真っ暗になった。歴史的にドイツはPK戦無敗、対して伊国はPK戦で3敗している。でももう筋をとるものが何もなかった。しかたなく煎餅を食った。ばりぼりばりぼりばり...ぼ...「ぎやあああああ!」。そしてあの一瞬が訪れた(文頭へ戻る)。


あれだけ押し込まれていて、あれだけ望みが消えかけていて、そこからのドンデン返し。何年も縁がなかった決勝進出。もーおかーさんは涙です。これから祝杯をあげに街へ出てくる。ばい。