カッスーラなるもの

がある。ミラノの伝統的家庭料理だという。「お金がない層の人たちの冬のご馳走だった」てな説もある。おそらく「キャベツ+ブタさんの捨てるとこ」という材料ゆえだとおもう。ブタさんの足が入っている、皮が入っている、臓物も入っている、場合によっちゃ血も入れるという。そんなカッスーラをつくろうなどと、一体誰が言い出したのかは飲んでたから忘れたが、酔っぱらいの約束にしちゃ(非常に)珍しいことにこのカッスーラ・パーティはちゃんと実行された。異常な執念をもって。


執念をもって調理を担当した友人ファビオとクラウディアは、大鍋を借りるところから作業を始めた。カッスーラは、大鍋である。なぜならまず3キロのブタさんの捨てるとこ、3キロのブタさんの皮が入る。そんなもんは普通の肉屋では売っちゃいないから、ちゃんとカッスーラ専用の肉屋(彼らの街には存在するのだ)へ行く。さらに6キロのキャベツを入れる。双子の赤ん坊ぶんのキャベツは、1枚づつ剥がしていくと嵩が増え、どんどん増え、ファビオ宅の広い流し場を占領し、はみ出し、台所を占拠したという。


それを煮る。ひたすら煮る。6時間煮る。ごぐろうさま。


そして一晩寝かせる。一夜明け、お腹をすかせるだけであとは何もしなかった私と友人Aがファビオ宅を訪れ、大鍋のふたをとると、そこにはこんなものが。いた。

おお。カオスである。この世の物とは思えぬ。


「ひとり3杯」というノルマがかせられ、かきこむこと約40分。12キロ/6時間は、3キロ/40分で4人の胃袋にほぼおさまった。おお。満腹である。この世の者とは思えぬ。しかし、私はこれが人生で2度目のカッスーラだったのだが、2年前に街の食堂で食べたものよりあっさりしていて食べやすかった。本物はもっと「臭う」のである。ブタさんちっくな臭い。ファビオとクラウディアはその「臭さ」を求めてセカンド・トライをするという。私はもうしばらくカッスーラの写真すら見たくないとゆうのに..。