首相のお粗末と新法王

大きなニュースがありました。まず、先日の統一地方選挙での中道右派・連立与党(フォルツァ・イタリア/アレアンツァ・ナツィオナーレ/レーガ・ノルド)の大敗を受け、また、15日、そもそもは4党で構成されていた連立与党からキリスト教民主中道連合という党が「僕たちは抜けるよ」と脱退を宣言したことを受けて、18日、首相のベルルスコーニが「チャンピ大統領に辞表を出す」というニュースが、伊国内のみならず世界を巡りました。が、結局、彼は辞めなかった。報道によれば、大統領と1時間ほどの会談を終えて出て来た彼は「僕はやっぱり辞めないよ、ニッコリ」と笑ったという。そもそも辞表提出という策自体が、解散・総選挙を避けるため、いわゆる保身・保党・保権のためのものだったといわれていますが、「やめる」「やっぱりやめない」とダダ子のように、さしたる説明もなくコロコロと、周囲を騒がすだけ騒がせ、そんなんがまかり通っていいものなんでしょうか。いいはずがなく、今、政界は上を下への大混乱。


そんな折、バチカンでは新法王を決めるためのコンクラーベが始まり、昨日19日午後、3分の2以上の得票数を得て、早くも新しい法王が決まりました。これももちろん大きなニュースです。けれども、大きかったがゆえに、ベルルスコーニの「スキャンダラスな行動」についてのニュースは、うまいこと隅へと追いやられてしまった。新法王決定がヘッドラインを飾るのは、まあ、コトの大きさからすると仕方がないかもしれませんが、この事態にはおそらくもうひとつ無視できない要素があって、ベルルスコーニは、サッカーチームのA.C.ミランだけでなく、3つのテレビ局を所有しているのです。そしてまた、伊国には「国営放送」のチャンネルが3つあるのですが、これは実質「政府のチャンネル」でして、つまり彼は6つのテレビ局に多大な影響力をもっている。わけです。うちにはテレビがないのですが、実際、昨日のこの6局のニュースは、「法王決定めでたいめでたい」を20分ほどかけて報道し、首相のお粗末ぶりについてはほとんど触れていなかったといいます。


余談ですが、ドイツではベルルスコーニは「ベルルスコニーニ」と呼ばれているそうです。理由は「ムッソリーニとまったく同じことを繰り返しているから」。さて、この国はどこへ逝くのでしょう...。