なぜか歩いて帰る私

忘年会という言葉は伊国にはないが、クリスマスが近づくとパーティが増える。パーティといっても私の知り合いはあんまし金持ちでない人ばかりなので、いわゆるアペリティフだけのことも多い。アペリティフは「食前酒」という意味だが、伊国語ではこれを「アペリティーボ」と言うのだが、ミラノでアペリティーボと言うと、これはアペリティフとは少し違った意味を持つ。ややこしいな。


説明すると、ミラノには、これは ミラノだけ の習慣らしいのだが、夜7時ごろから9時ごろまで、いわゆる「アペリティーボ・タイム」というのがあり、その間は、おつまみが無料で提供されるのだ。市内にあるおそらく「すべての」バーで。つまみといってもバーによって豪華だったりチンケだったり、あったかいパスタが出たり、昨日から使い回してるんだろうピクルスだけだったりいろいろで、ともあれとにかく食いもんはタダ。そのかわりドリンクは一律5ユーロとか、一律7ユーロとかお金がかかる。


しかしうまくバーを選んでこの時間帯を最大限に利用すれば、つまりはブッフェ・パーティに出向いたオバチャンと化すれば、たとえば今夜の私のように「ビール2杯で10ユーロ(いま1400円弱)で4時間ねばってそこそこオナカいっぱい」という飲み方ができるわけですね。もちろんさらに効率化を計れば「ビール1杯で5ユーロで6時間ねばってもう吐きそうなぐらいオナカいっぱい」ってのもアリです。


で、今日もまた伊人たちと馬鹿話をして帰って来た私なのだが、なぜか私は「家に帰るのに送ってもらえない」という憂き目に遭うことが多い。車社会の伊国では、そしてまた酔っぱらい運転に寛大な伊国では、ほとんどの友人が車で来ているにも関わらず、だ。なぜだ。なぜわたしは夜中の11時に「さぶいよお」とぼやきながらひとり公共交通を待ち、「貸し切りだよお」と思いながらひとり公共交通に揺られているのであろう。もちろん全ての友人が私を道ばたに置き去りにするわけではなく、日が落ちたらきちんと門前まで送り届け、私がドアを開けて中に入るまで見届けてくれるジェントルな友人もおる(>でもべつに過保護ぢゃないんだよ。だってここは伊国。怖いんだから。それがふつー)。しかし、私をよく誘い出す友人ほど私を置き去る。なぜだ。


と憤ってみるのだが、おそらく私の側にもなんらかの責任があるのだと思う。このクリスマス休暇にとっくりとそのへんを考えてみようと思う私であった。ちゃんちゃん。


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