の野菜

食い意地がはった家で育ったため、わたしは「おいしいもの好き」である。グルメというのではない。食道楽などという気取ったものでもない。ただ、そのときどきに食べたいものを(かなり)真剣に考え、それがまずいと気が腐る。というわけで仄かな自信をもって言いたい。ニポンの野菜はまずい。


健康のために野菜を食べなさいなどとの食育が何年も前からされているが、その野菜が年々まずくなるというのはどういうことか。大人でも子供でもまずいものは食べたくない。そんな当たり前のことに目を向けず、いろんな分野の陰謀で野菜をどんどんまずくしておいて、ガキどもに「ほれ食え-やれ食え」言うのは矛盾というもの。近年では、無農薬とか露地栽培とか、工夫をしている作り手さんたちの野菜も増えてはきたけれど、そのへんのスーパーやそのへんの八百屋で手軽に安価で買える野菜はまずい。野菜の味がせず水っぽく、この水っぽさが「旨み」に加担するのは大根の場合だけだとわたしは思う。


ということを、伊国で日々野菜を食っていると実感する。わたしは野菜っ食いで、週に2度は家から80mの八百屋へ行き、「これは今日中に食え」とか「これは今夜までには茹でとけ」などというおっちゃんの講釈を聞きながら、おまけにもらったスモモなんかをボリボリかじりながら、大型ビニール袋いっぱいの野菜を購入する。なんてことない町の八百屋。しかし、トマトはトマトの日向臭さを、ナスはナスの渋みと濃さを、セロリはセロリの苦みを「てやんでぇ」てな具合に放っている。


なんで伊国の野菜はうまいのか。土地がどうのとか肥料がどうのとかいう答えを期待して聞いてみた私だが「ふつうの畑でふつうに作ってるだけ」。あ...そ。それもまぁ仕方ない、この国ぢゃこれがノーマルだからだ。ふつうの畑でふつうに作る、この「ふつう」が伊国とニポンでは違うちうことなのだろう。


ニポンのお菓子はおいしい。もうこれは他国と比較するとわかるが非常においしい。ヨックモックのクッキーを食った友人Aは「なんでこんなうまいものがある国を離れようと思ったのか」と真顔で私に聞いた。ニポンのインスタント食品もおいしい。韓国のカップ麺などと比べてみるとよくわかるが、150年ぐらい先をいっている。缶入りのドリンクも菓子パンもアイスクリームも、ニポン製は泣くほどうまい。そりゃ、子供はそっちへ走りますがな。