雪降って刹那

雪でしなった枝が重みを手放して跳ね上がる
わはは ぷぷぷ わはは くくくく
えらいひとしか眠れない墓地を囲んで
車の歩みにあわせて枝が枝が枝が
白を巻き散らしながら頭をもたげる
わはは きゃはは ぐはは はははは
連れがわたしの名前を呼ぶ
やめろの意味 でもこれじゃ犬や猫だ


1杯目のビールを飲み干したら
お揃いのエプロンをつけたふとった男と痩せた男とふとった女が
何か大きな声で怒鳴りながら 肉と骨と肉をぐちゃぐちゃにつかんでいる
なに? なんなの? なにごと?
聞いてきたウパパな女を連れが張り飛ばす
つかみあっている肉にビールを頼むと
カウンターから飛んできたジョッキが
毛のない客の皮膚を直撃する がちゃん
それを合図に全員がグラスを手にする
がちゃん ごつん がっしゃん がちゃがちゃん
店の主人らしき老婆が大ジョッキを投げながら
「私は47歳よ」と叫んで わたしと連れを指差している


急発進した車はエンジンをかけずに氷の上を滑り
肉と骨と肉と47歳とウパパ女とその他大勢が 
カンカンに怒って つつーと滑りながら後に続いている
左右の枝が早送りで跳ね上がり わふわふした粉をふりかける
ははは きゃはは くっくっく わははは
連れがわたしの名前を呼ぶ
笑いを飲み込んだちょうどそのとき
跳ね上がったばかりの枝の上に●●●●への裂け目がぱっくりと開き
わたしたちはそこへ滑り込む