タイルとコウモリ

毎日のように伊国語に苦しめられているのに、今までここに伊国語のことをあまり書いたことがなかった。学び始めてたかだか4年というわたしが伊国語について語るなど百万年はやい。そう思っていた/るからだ。しかし。またやってしまったのでそれを書こうとおもう。

あくまで私の場合だが、どうしても何度失敗しても何度でも「こんがらがってしまう単語のペア」というのがある。決して難しい単語ではないし、だからこそ使う機会も多いのだけれども、ここ4年間、いつもいつまでもこんがらがり続けている。たとえば:


  コートと帽子:Cappotto(カッポット)とCappello(カッペッロ)
  絵画とノート:Quadro(クアドロ)とQuaderno(クアデルノ)
  会社と手帳: Azienda(アヅィエンダ)とAgenda(アジェンダ


もちろん、落ち着いて考えれば、また文字を読めば、また人が言っているのを聞けば、ちゃんと区別はついてなんの混乱もない。しかし、いざ自分が流れの中で使うとなると5割の確率で「別なほう」が飛び出す。しかし上の例はまだかわいい。「あ、間違った」で済むし、相手も「あ、間違ったな」で済むからだ。ところが、次のよーな「こんがらがり」になると相手を少なからず混乱させる。


  親戚と内壁:Parente(パレンテ)とParete(パレーテ)
  ショックとバカ:Shock(英語ですね)とsciocco(ショッコ)


しかし、わたしが本当に恐れていて、憎んでいて、口にするときに必ず100%間違えるのは以下のペアである。


  タイルとコウモリ:Piastrella(ピアストレッラ)とPipistrello(ピピストレッロ)


この間違いは、経験的に、もはや沈黙を誘う。コウモリなどという単語をふだん使うことはほとんどないから、ほぼ100%の場合で「タイルが在るべきところにコウモリが居る」わけで、逆ならまだしもこれはもうその図柄を想像するだに可笑しい。しかも困ったことに、わたしにとっては語感的に「ピアストレッラ」より「ピピストレッロ」のほうがキャッチー(死語)なのだ。だから出る。仕事中に唐突になんの脈絡もなくコウモリを飛ばしてしまったときなどは、我ながら身がよじれるほど可笑しくて仕方がないのに笑えなくて困る。だからインテリア系のお仕事は、極力しないようにしている。