の代わりに謝罪

「ええ、本当にもうどうしようもない国で。すみませんねぇ」。
という言葉を今まで何度口にしたでしょう。ニポンから伊国を訪れる人は多くのものを発見する。その筆頭が「不便さ」だ。ニポンから伊国を訪れる人はいろんなことに驚く。まず第一にその「不便さ」にだ。


コンビニはない。多くの店は昼休みをとり日曜は閉まる。レストランのサーブは遅く、ここではハンバーガーもファスト・フードではない。スーパーのレジのおばさんは決して急がない。自販機は壊れていることが多い。公衆電話も壊れていることが多い。バスは時間通りにはこない。アポイントメントをとった相手もしばしば時間通りこない。バスの停留所名を告げる車内アナウンスはない。人は並ばない。横入りはふつうである。ホテルはときどき水が出ない、あるいは茶色い水が出る。「このホテルはインターネットが使えます」しかし使えないことも多い。しかしフロントのねーちゃんは謝らない。インフォメーションのにーちゃんはしばしば笑顔で嘘をつく...以下永遠に続く。とまれ、ニポンから伊国を訪れた人を前に、こういったもろもろの事態がおきたとき。


「本当にもうどうしようもない国で。申し訳ございません」。


伊国に口はないから、たとえあってもきっと謝らないから、代わりにわたしが謝るしか、その場を収める術はありません。しかしなんだって、わたしがこんな「どうしようもない国」の肩代わりをしてやらにゃならんのだ。いつも腹立たしい。夜中に気軽にジュースが買えないのも、自販機でおつりが出てこなくっても、ホテルの部屋でネットが使えなくってもわたしの所為じゃないもん。ふん。


「だったら、そのどうしようもない国に住んでるのはどして?」。そう。正しい。そう聞かれると言葉に詰まるわけでして、そこは私の責任なわけでして、だから肩代わりもしかたないっちゃしかたないわけでして...ぁ..ぅ...ぁ...ぅ...。