今日から春です。

わたしが決めました。ミラノは今日から春。いやしかし、こんな青空を見たのは本当に何ヶ月ぶりでしょう。東京に帰ると「空がきれいだあ」と思うというのはかなりの重症です。ひどいところに住んでいる。実際、ミラノの空気の汚れは半端でなく、今データを引きずり出すのが面倒なので数字は出せませんが、ときどき「市内に車が入れない日」というのが設けられることからも、その汚れぶりを推し量っていただけるはず。そう、伊国では、とりわけミラノでは、空気中の有害物質が規定値を超えると「今週日曜日は市内への車の乗り入れ禁止」というお達しが突然に出されます。また、数値が微妙な場合は「車のナンバープレートが奇数で終わる車だけは入っていい、そのかわり明日は偶数で終わる車のみ」などとこの通達もややこしくなったりする。いずれにせよ、アハハな対症療法。抜本的な改革も「ディーゼル車廃車規定」などちらりほらりとなされているのですが、他の先進国と比べると何百万光年も遅れている。


ミラノはとくに工場地帯がすぐ近くにあるわけではないので、主な汚染源は車と住宅からの排気です。とりわけ冬がひどい。なぜならここでは、ほぼ大半のアパートメントが暖房を集中管理していて、つまり各部屋では暖房が「朝6時から夜10時までつきっぱなし」になっている。うちのアパートの場合は、人がいなくてもつきっぱなしで、3ヶ月のバカンスに出ている家もつきっぱなし。その排気が、アパートの屋上についたカワイイ小さな煙突たちから、もくもくもくもくとミラノの空へ流れ出る。ひっきりなしに。とめどなく。冬に外から帰ってきたとき部屋がぬくいのはよいのだが、地球資源のことを考えるともうこれは「バカタレ」です。最近、新築される物件に関しては、各自がそれぞれ暖房を付けたり消したり、というところも増えてはきているようですが。


また、ミラノの大気汚染は、その地理的な条件にも関係しているといいます。ミラノは盆地の底にある街で、だからして汚れたものが溜まり澱み、おまけにそれらを一掃してくれるはずの風が吹かない。まったく吹きません。どんなに冬が寒くても風がなければ人間はけっこう耐えられるものだと、この街に住んで知りました。しかし、肌はぬくくても肺はまっくろ。まんまみあ。


てなわけで、久しぶりの青空に、喜んでいいのか悲しんでいいのか。こんないい天気の日に家にこもっているのもナンだと思うのだが、今日はイースター後の月曜日。祝日でござる。街は空っぽ、すべてのものは閉まっている。ひどい国だ。とりあえずユーリズミックスでもかけよう。空が青い日はなぜか There must be an angel が聴きたくなる。