銀行は盗人だ

自分の銀行口座にいま一体いくらお金があるのかわからない。いま、だけぢゃなく、いつも恒常的に日常的にわからない。キャッシュディスペンサーでお金を引き出すと、ちゃんと明細書が出てきてそこにはちゃんと「残高」という欄もあってちゃんと金額も書いてあるのだが、それを見たってわからない。間違ってるからだ。「なんとなくこんなかんじでプラスマイナス100ユーロぐらい」ってことで納得するしかない。で、次にお金を引き出したとき、ごっそり減ってたり、あろうことか増えてたりする。一体なにがおこっているのだろう。


伊国の銀行には「通帳」というものが存在せず、わたしの場合は3ヶ月に1回、過去3ヶ月ぶんの口座内のお金の動きを記したリストが郵便で届く。そこには、キャッシュディスペンサー等でお金を引き出した記録だけでなく、たとえば仕事のギャラやらで「入ってきた」お金ももちろんちゃんと記載されている。でも、それを見ても「誰から」振り込みがあったのかはわからない。「うちと同じ銀行の他支店からの振り込みだよ」あるいは「どっかうちとは違う銀行から振り込みがあったよ」ってことしか書かれてないからだ。一体なんの意味があるのだろう。


今日、銀行からの通知が3ヶ月ぶりに届いて、いつものように、リストに間違いがないか端からチェックした。この銀行のリスト、仕事をした先の会社から郵送で届いた支払い書、そして仕事した日付とギャラが書いてある自分の手帳、と電卓。それだけ総動員して、全部を照らし合わせてみても「一体どこの会社が、なんの仕事に対してギャラを振り込んでくれてて、どこの会社がなんの仕事に対して未払いなのか、そして私の口座の残高は現時点でいったいいくらなのか」がまったくわからない。「きっとこの200ユーロはこの会社のあの仕事、イヤこっちかも」とあちこち嵌めてみて...って、パズルやクイズぢゃないんだからさ。銀行のリストはすでに書いた通りで、会社から届く支払い書も日付はめちゃくちゃで「何の」支払いだかも書いてない。一体なにをどうすればナゾはとけるんだろう。


大抵、最後は投げる。わからんもんはわからん。ここでつまづいてちゃこの国では暮らせない。しかし、だからといってチェックを怠ることはできない。こともあろうに銀行が平気でじゃんじゃんドカドカ間違うからだ。ある友人は、1年ほど前、ある日突然残高が「1000ユーロきっかり」増えてたという。もちろん彼は知らん顔をしてた。いまだに「返してくれ」という電話はないという。増えるちうことは減ることだってある。油断がならぬ。しかも伊国の銀行は、とりわけ悪名高きわたしの銀行は、年間なんと100ユーロ(1万4千円ぐらい)もの口座維持手数料をとるのだ。そう、あなたのお金は減るんです。預けとくだけで。伊国はスリやかっぱらいが多いとよく言われるが、銀行に比べりゃカワイイもんだ。