にも嵐が上陸

近頃ちょくちょく飲みにいく友人と、いつものバールに入って、いつもの席に座って、いつものようにオーダーをする。「中ジョッキふたつ」。別に他のバールでも他の席でも他のもの飲んでも一向に構わないのだが、なんとなく習慣で、そういうことになっている。が、その日は何かが違った。友人も落ち着かなそうに辺りを見回し、そして、気づく。


「灰皿がない」のだ。
すべてのテーブルの上から灰皿が消えていた。


  わたし:あ...もしかして今日から?
  店員 :昨日の夜の12時からです。
  友人 :ああもうイヤだおれはイヤだ信じられない...(すでにパニック中)
  わたし:まじ....ですか。他のバールも?
  店員 :まじ、です。他のバールもレストランも。
  友人 :××××!! ××××××!! (ピーな言葉連発中)


なにがおこったかというとだ。禁煙嫌煙のわけのわからない嵐はここ伊国にも上陸し「1月9日の午前0時」から「公共の建物内での喫煙禁止令」が施行されたのデアル。レストラン、バール、ホテルのロビーはもちろん、ディスコでもライブハウスでももう煙草は吸えません。正確に言えば「きちんと壁で仕切られた喫煙部屋があれば公共の場でもOK」ということなのだが、実質ミラノ全市内で煙草が吸えるレストランはもはや「約30軒」しかないという。もし違反すると、吸ったほうには五千円程度の罰金だが、吸わせた店側には50万円前後だかの罰金が科せられる(正確な額はいずれ調べるが今はショックでその気にならぬ)。


さらに正確に言えば、この法律は前からあった。ただ、具体的に違反者を取り締まる「機構と気力」がなかっただけだ(伊国ではコレ非常に多い。いわゆる"ザル"とゆーやつ)。そのだらしのなさがこの国のヨイところであるわけだからそのままにしておけばいいものを、いきなりまぢめなフリをしてこーゆー極端なことを始めたのは一体どこのバカか。


私は愕然としつつもとりあえずビールを飲み、友人もひと通り悪態をつきおわり落ち着いたかに見えたのだが。1杯。1杯しかもたなかったね。「寒いか助サン」「いんや寒くないぜ格サン」「そんならチョイと....」「オウ、がってんだ」。そそくさと我々はバールを出て、通りの向かいで瓶ビールを買い、座ったさ。寒風吹きすさぶ広場のベンチに。やがて友人はベンチで遠い目をしながら、祖国を捨て(まだ室内で喫煙できる)独国へ行くと語り始めた....。


喫煙しない方々は「嫌煙者の気持ちにもなってごらん」「だったら煙草やめればいーじゃん」「百害あって一利無し」などとおっしゃいますが、まったくもってその通りなのです。わかっているのよ頭では。ご迷惑なのもわかります。でも、理性49%。わかっていたってキモチよいことはヤメられない。ごめん。


伊国政府サン、なんでもいーから早く息切れしてくださいな。きっと暴動がおきるぞ。