Ti prendo e ti porto via

この本を読み終わってしばらく時間がたっていて、本当は読了後すぐに何かここに書こうかと思ったのだけれど、なにを書けばよいのかわからなかった。最後まで読み終わったとき、おもしろかったという以上のものがあったのは確かなのだけれども、「なにが-どう」というのが私にもよくわからなかったのですね。


  「Ti prendo e ti porta via」
   Niccolo' Ammaniti著/Mondadori版/初版1999年
   ISBN:8804476796


今でもうまく言葉にはできないのだけれど、たぶん、この小説は、私自身の中にある --そしておそらく程度は違えど誰の中にもある--「弱さ」とか「どうしようもなさ」を、えぐるのだと思う。非常に痛い。痛いんだけれども、納得がいかなかったのは、この小説がきれいにオチをつけちゃってるということで。「ある部分に弱さ/どうしようもなさを抱える者」が「あるドラスティックな出来事」を通じて「その弱さを克服」して「ある種の強度」を得る。という具合に。もちろん、452ページある小説は、そんなにまっすぐに進むわけではなく、その間にさまざまな紆余曲折はありますが、ともあれ最後はとてもきれいにオチる。オチてる気がします。


でもでも、そんな、簡単なものかね。オチをつけて、つまりは救いを提示することで「簡単だ」と夢をみる/みさせるのは読者あるいは筆者の自由なのだけれども、そんな、簡単なものかね。と、わたしはそこで少し捻くれてしまう。救いを提示することで、この本は、パオロ・コエーリョ(>愛読者にはすまぬが、わたしは嫌いです)の世界に近づいてしまっている気がする。これだけ読者をいじめられるのなら、いじめぬかなければいけない。読者の思考を停止させてはいけない。安易に救ってはいけない。そう、思うのだが。


この本はまだ邦訳は出てないようだけど、同作者の本が1冊、日本語でも読めます。こちらは少しホラーが入ってて、同タイトルで映画にもなってる(>映画すてきです)。


  「ぼくは怖くない」(原題:Io non ho paura)
   ニコロ・アンマニーティ著/荒瀬ゆみこ訳、早川書房(ハヤカワepi文庫)、2002年、798円
   ISBN:415120024X


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