La testa perduta di Domasceno Monteiro


読了。
邦題:「ダマセーノ・モンテイロの失われた首」
またしてもA.タブッキ。またしても舞台はポルトガル。町外れの公園で、男の首無し死体が見つかるところから話は始まる。当然「こいつは誰だ」という流れにそって話は進むわけだが、実はこの小説、ポルトガルで実際に起きた事件を下敷きに書かれている。著者は、ストラスブルグのヨーロッパ議会に掛け合って集めた「膨大な捜査資料」と格闘しつつエンドまで書き上げたのだそーだ。
小説の結末は伏せるとして、実際の事件は、長い長い捜査の果てに警察官 Jose' dos Santos が罪を自白、17年の刑を言い渡されて幕。首無しの被害者は、なんとリスボン近郊にある「共和国警察の詰め所内」で殺されていたというオチだった。ま、まづは読んでみてください。


  アントニオ・タブッキ「ダマセーノ・モンテイロの失われた首」草皆 伸子訳、240頁、2310円、
  白水社、1999年、ISBN:4560046670


原書情報はこちら
  Antonio Tabucchi ''La testa perduta di Domasceno Monteiro''
  249P, 7.00euro, Feltrinelli (Italia), 2002年版


あ、死体はでてくるけれど推理小説ではありませんから。警察を含むお上の「権力」と「市民」の関係を、フィクションというかたちをとりつつ、おそらくかなり現実に近いかたちで「バラし」ちゃってる本です。で、誰もが気づいていながら触らないでいる その関係における理不尽な部分 に、「望まずして」触れてしまった 某まぢめな市民 が、パパのような他人の助けを借りつつ「あくまでも望まずして」動く、という構図。もちろん、慣れ親しんだ作法をあきらめつつ、権力とは反対の方向へ、です。ただ、この「望まずして」がキモ。だから「vs権力ヒーローもの」とか「自分の新たな有り様を見つけていく云々」といったような猛々しくポジティブな形容は、この小説にはあたらないと私は思います。そこが好ましく。そういえば先に書いた「Sostiene Pereira」もそうですね。
こうなってくると、タブッキの背景なんかも気になってきますが・・・疲れたのでまた後日。
追:どなたかコレ映画にしませんか。映像的にきっととつてもきれい。首無し死体 は無理かしらん。


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