ハリモグラという生きものを

見た。数日前の真夜中、ミラノの町外れの飲みどころへ向かう途中、そこは車を停めた道路から大きな野っ原を突っ切って辿り着かねばならぬのだが、その野っ原をトコトコと。ハリモグラが歩いていた。


そのナリはおそろしくまぬけだ。うつむいているので顔は見えない。ニンゲンの視点からだと「サッカーボール大のハリハリしたものがぞわぞわと盲目的に前進している」というビジョンになる。持っていたバッグで進行方向を塞いだら「もぞ」と動かなくなった。死んだふりか。でもこのハリハリは目立ってるぞ隠せないぞ。例えようもなくかわいい。うっきゃーである。


町外れとはいえ町の中を歩いていてハリモグラに遭遇する。そんなことはあってはならない。そんなおっかしーことはあってはならない。このとき私はげちょんげちょんに酔っぱらっていたため、二日酔いで目覚めた翌朝まず気になった。「現実か幻覚か」。連れだっていた友人Aに電話をした。現実だったらしい。そして連れに言わせると、ハリハリを前にした私の狂喜-乱のほうがよっぽど非現実的だった。そうだ。