インタビューの鉄則

ニポンで物書きをしている間、思えば随分とたくさんの方にインタビューをさせていただいた。思えば当初は録音を聞き直して自分で絶叫するぐらい下手だった。それから数をこなして、決して上手になったとは言わない。けれども、上手なインタビュアーたるために絶対にしてはいけないことひとつ。それだけは身体で理解した。


「インタビュアーがしゃべってはいけない」。


全体の会話量を10とすると、インタビュアーがしゃべるのは「1」でいい。インタビュイー(インタビューされる人)が話したことを全身耳にして聞いて、次につながる相づちを打つ。それでいい。心持ちとしては、そうあらねばならぬ。と少なくとも私はおもっている。


して、これに照らし合わせると、伊人というのはインタビュアーには向いていない。決定的に向いていない。絶望的に向いていない。本質的に向いていない。自分がしゃべってなんぼの人たちだからだ。ということを先日、Miranda July(注:映画「Me and You and everone we know」の監督ですね)の来伊イベントで心の底から痛感した。自著のプロモーションのため、わざわざ米国からやってきた彼女を前に、なんだかよくわからないおっさんが本の内容をダラダラと語り、なんだかわからない女性インタビュアーが、「一生懸命用意してきたみたいだけどねぇ。まったく噛み合ってないよねぇ」という質問をズラズラと並べたてる。聴衆のひとりに過ぎない私が「ごめんね...こんなで」と伊国にかわって謝りたくなった。


大体、新刊書のプロモーション・イベントで、本の内容を事細かに語るのは頭がおかしい。こちとら全員「これから読むのを楽しみにしている」のである。しかし、おっさんは得々と喋り続け、私はついにipodのイヤホンを耳につっこんだw。あと5分続いていたら、私は絶対に挙手しただらう。


そんな訳で、つまらぬ憤りに疲れてしまつたが、Miranda Julyは可愛かった。ナリも喋りも、それはそれは可愛かった。人からサインなどもらったのは何年ぶりだろう。著書のほうは現在料理中。