寿司ではないニポン食

数年前からニポンブームのミラノだが、いまだに「ニポン人は毎日寿司を食べている」と信じている輩が多い。寿司屋の店員でもなければ、そんなことはあるはずもなく、大体あんなものだけを毎日食っていたら偏食でカラダを壊します。しかし「じゃあ何を食べてるの」と聞かれると、意外と答えにつまったりして、なぜならニポン人はおそらくネコと唯一争える民族、すなわち世界一の雑食人種だからで、伝統的な和食というものは存在するものの、日々の食卓はそういうものだけで彩られているわけではないからだ。とまれ、そういうニポンの進んだ食文化を、国をあげてパスタをせっせと大量消費する伊人に説明するのは難しく、それは雨の降らない国の人に雨を説明することの難しさとすこし似ている。


簡単なのは食わせることだ。そんな機会がひょんなことから訪れた。わたしの家は夕食会など催せるほど広くなく、またそんな企画を自分でするほどマメではないので、これまでにもおそらくこれからも滅多にない機会。ということもあって、スポーツ観戦でも皇族のパレードでも絶対に日の丸など振らないわたしがやにわにニポンを背中にしょってしまった。40度を越える暑さのなか、「見ておれ伊人め」などと鼻息荒くひとり盛り上がり、しまいには食べるためにつくっているのか作るためにつくっているのかわからなくなり、そんな本末転倒も手伝ってあとは勢い、ひたすらちぎっては投げちぎっては投げ...。


作った本人の前で「まずい」言う奴はさすがにいないから、味のほどがどーだったのかは謎だが、石油プラントでも建てたぐらいの大きな自己満足を得たわたしであった。