夏の休暇

8月15日は「ふぇらごすと」という名の祭日です。日本のお盆みたいなもんで、だからこの日を挟んで、会社はみんなお休み、店も大体が休み、そしてほとんどの人は休暇でどこかへ行ってしまう。この国の人たちは、どこかへ行ってしまうのが本当に好きだ。


かくしてこの時期、ミラノというなんの娯楽もない街には、貧乏人と怠け者と変わり者だけが残る。もしくは貧乏で怠けた変わり者。彼らは大抵、地蟲のごとく夏の日差しを避けて、家で読書などしていたり、近所がいないことをいいことに大音響で音楽を聴き続けたりしている。わたしの周囲にも、ざっと見回すとふたり。


そのうちのひとりと電話で話す。「暇だねえ。誰もいないねえ」「そうだねえ。暇だねえ。誰もいないねぇ」。だったら暇なモン同士、なんか画期的なことでも計画すりゃあいいものを「何やってんのいま」「本読んでる。そっちは」「あたしもー」。一応、何やってるかなどと尋ねはするが、話は一向にアクティブな方向へ流れていかない。だらーと。だらーと。あくまでだらーと。


たしかに暇で誰もいないのですが、わたしはこの時期のこの街が結構好きだったりします。