首相の醜態- e' dotto come uno scaffale

選挙を前にしながら、少し前から首相のスキャンダルで騒然としている伊国。若い愛人をつくって妻に三行半を突きつけられたという話はともかくとして。イギリスの弁護士デイビッド・ミルスに、収賄の疑いで「4年6ヶ月の禁固」という判決が下された。これを買収した(仮:まだ法的に確定したわけではないので)のが現首相のベルルスコーニだ。


ミラノ検察によれば、ベルルスコーニは、彼を被告として進行中だったふたつの裁判(イタリア財務警備隊とAll Iberianへの贈賄容疑)での「偽証」を当弁護士に依頼、彼の持つ企業グループFININVESTのマネージャーを通じて、60万ドルを当弁護士に支払った。報道によれば、この金を弁護士が実際に受け取ったのは2000年2月29日。その後ずっと知らぬ存ぜぬを決め込んできたミルスを自白に追い込んだのは、彼自身に対する国税庁の追求だった。


ざっと要約するとそういうことになるのだが、問題はこの後だ。ミルス側は上告できるが、この案件は2010年4月に時効を迎える。さらに、贈賄者と見られているベルルスコーニは時の首相。そしてこの国では「政府の要職にある人物の裁判はペンディング」という法案を「今まさに審議している」ところなのである。この法案は、昨年、2008年の6月26日に閣議で承認された。閣議メンバーとはすなわち、言うまでもなく現首相=ベルルスコーニの側近ということだ。


アモーレ&カンターレの国が、本当はどういうことになっているのか。急いで要約した上の数行からでも伺い知れるだろう。私はここずっと、新聞を読むのをやめていた。ページをめくるたびに腹が立つからだ。ニュースも意図して聞かなかった。腹が立つからだ。しかしまた、やはり、読み始めなければならないと。

英語で映画-vol.2

「1日1本」とはいかない慌ただしい日々を過ごしてしまったのだが、いい-濃い映画を観たこの1週間。すべては映画狂の友人Tのおかげ。謝々。

  • L'onda : The wave
  • Changeling
  • Diario di uno scandalo : Notes on a Scandal
  • Iron man
  • Ex Drummer


友人Tによれば「The wave」は米国の同名ドキュメンタリーが原作のドイツ映画。舞台はのほほんとした高校なのだが、ひとが-いかに-たやすく-全体主義に染まっていくかという過程が描かれていて非常にこわい(注:血が出る怖さではない)。あまり怖いので途中で観るのをやめようかと思ったが、これはほんと珠玉。観るべし。


「Changeling」も後味が非常に悪いけど素晴らしい。クリント・イーストウッドというのは「なんちゃって監督」なのかと思っていた自分の無知を恥じた。「Diario di uno scandalo」は、007のM役のジョディ・デンチとケイト・ブランシェットの共演。これもまた非常に後味が悪く切ないのだけれどもいい映画。監督はRichard Eyre。


そして。「あいあんまん」だ。無人ビデオ屋でしか借りたくない、ポルノを借りるよりも恥ずかしいぐらいのタイトルだが「おもしろい」。やられた。最後の「Ex Drummer」は、カルトな映画好きの友人が、無理矢理わたしのパソコンにコピーをしていったのだが、本当に汚いC級映画。それぞれ身体にハンディキャップを持つ3人組のバンドが、著名な作家を巻き込んでバンドのコンクールで優勝を目指すという、語っても意味がわからない映画なのだが、これが異様なインパクトがある。血に耐えられる人は観て。


てなわけで。

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを


原題:God Bless You, Mr. Rosewater, or Pearls Before Swine
カート・ヴォネガット-Kurt Vonnegut/浅倉久志訳/1982年邦訳初版/ハヤカワ文庫


友人Tも指摘していたが、カート・ヴォネガットはいろいろな方が訳しているけれど、どれも邦訳がすんばらしい。伊語でも読んでみたが読むなら絶対に原書か日本語。

il passato e' una terra straniera

il passato e' una terra straniera
di Gianrico Carofiglio/BUR/2006


当著者の本は石橋典子さんの訳で邦訳が2冊出ているが、この本はまだ日本では出版されていない。彼の文章は無駄がないのに雰囲気とリズムがあって、中でも私はこの本が一番好きなのでとても残念なお話だ。
彼はイタリア南部のプーリア州はバーリの生まれで、判事-作家-上院議員という3足のわらじを履いている。作家としても、対-マフィアの騎手としても、伊国のみならず欧州で広く知られている現在の伊国の「顔」のひとりだ。
早々の邦訳を願う。